環境分析の手法である「SWOT分析」とは、内部環境としての「強み(Strengths)」と「弱み(Weaknesses)」、外部環境としての「機会(Opportunities)」と「脅威(Threats)」をそれぞれ分析するものです(Wikipedia「SWOT分析」)。頭文字をとると「SWOT」になりますね。
一般的に、経営戦略を策定するための手順(経営戦略策定フロー)には、つぎのようなプロセスが含まれています。

このように、外部環境や内部環境を分析するためによく使用されるのが「SWOT分析」です。環境分析は、「経営戦略」を策定するためのプロセスの一部です。つまり、「『SWOT分析』をやったからおわり!」というものではありません。具体的な「経営戦略」を策定するための分析であるということですね。
ある会社の「強み」が、ほかの会社では「強み」ではないということもあります。たとえば、とにかく営業力が必要な会社では、「わかくて元気な社員が多い!」ということが「強み」になるかもしれません。しかし、ながい経験が不可欠で高度な技術が重要な経営資源となる業界にいる会社では、「わかくて元気な社員が多い!」ということが「強み」であるとはかぎりません。
「機会」と「脅威」についてもおなじことがいえます。「円安傾向」であることは、輸出が多い会社では「機会」だと考えることもできますが、輸入が多い会社では「脅威」になるかもしれませんよね。
「業界の競争構造分析」や「VRIO分析」も参考になりそうですね。
通常は、「SWOT分析」で会社の環境を分析・整理して、「『強み』を活かす、『機会』を捉える、『弱み』を克服する、『脅威』を回避するための戦略を考えましょう!」などといわれています。
しかし、「弱み」や「脅威」も活かすことが大切です。これはいったいどういうことでしょうか…。
経営学者の楠木(楠木建)さんは、「よい戦略には、部分非合理な要素が組み込まれているのだ!」といいました。すべての要素が合理的なものではなく、部分非合理な要素を組み込んで全体の合理性を構築しているものがよい戦略だということですね。さまざまな要素で構成された戦略のなかに非合理な要素を組み込むことで、他社にとってはそれが「どのような戦略であるのか」ということがわかりにくくなります。そして、非合理な要素をマネしようとはあまり思いませんよね。
これは環境分析についてのお話ではありませんので、「弱み」や「脅威」が非合理な要素であるということではありません。非合理な要素を検討するうえで、「弱み」や「脅威」がヒントになるかもしれません。また、その要素が戦略に欠かせない「強み」になるかもしれません。つまり、「『弱み』や『脅威』を活かした『経営戦略』を考えることもできるのだ!」ということです。
環境分析は、分析自体が目的ではありません。具体的な「経営戦略」を策定するための分析であるということです。「経営戦略」を策定するうえでは「強み」と「機会」だけではなく、「弱み」や「脅威」にも着目して、それを活かすという発想が大切であるかもしれませんね。
提携中小企業診断士 岩田 岳
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