「顧客(標的顧客)」customer:who⇒「だれに」
★「機能(顧客機能)」function:what⇒「なにを」
「技術(独自技術)」technology(「資源(経営資源)」resource):how⇒「どのように」
つぎに、「なにを」について検討してみましょう。

鈴木パン店の店主である鈴木さんは、「なにを」について「パンを」と定義しました。つづいて、田中パン店の店主である田中さんにも考えてもらいました。
「だれに」:この町に住むお年寄りに
「なにを」:たのしくお話やお食事ができる場所を
その場でパンが食べられるスペースを設置して、飲み物の販売もはじめた田中さんは、「ほかの小さなパン屋さんや大手パン屋さんチェーンとは『異なる方法』で『異なる価値』をつくる」ということを意識して考えました。お店で売っている「おいしいパン」は、この「たのしくお話やお食事ができる場所を」提供するための「手段」であると考えました。
お客さんにとっての価値が「パン」だけである場合、この町にあるたくさんのパン屋さんと同じ価値を提供しているということになります。いまのところ、「たのしくお話やお食事ができる場所」はほかのパン屋さんにはありません。この町では、田中パン店だけが提供できる価値なのです。
このように、「完全競争市場」での戦いや価格競争を回避して利益をうみだすためには、「他社と異なる方法で、他社と異なる価値をつくる」必要がありそうです。田中パン店にとって、「その場でパンが食べられるスペース」と「飲み物の販売」は「おいしいパン」とともに、「たのしくお話やお食事ができる場所を」提供するための「手段」なのです。
ドメインには「物理的定義」と「機能的定義」があるといわれています。「なにを」は「機能」でした。「物理的価値」と同時に、お客さんにとっての「機能的価値」を定義してみましょう。「この町に住むお年寄りに」「たのしくお話やお食事ができる場所を」提供するためには、田中さんの得意なカレーライスがメニューに加わるかもしれませんし、俳句の発表会などのイベントが企画されるかもしれません。パン屋さんだからといって「おいしいパン」だけにこだわる必要はないのです。
とくに、「市場に存在する競合の数が多い」場合や「代替財がたくさんある(『需要の価格弾力性』が高い)」場合、「商品の差別化が困難」な場合などは、「機能的価値」について考えてみる必要がありそうですね。
ここでも、「なにが提供したい価値であるのか」ということを特定するとともに、「なにが提供したい価値ではないのか」ということを明確にします。
提携中小企業診断士 岩田 岳
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