わかりやすい経営コラム ~経営者の皆さまへ~
 

 part34「多様性と冗長性」

 みなさんは、「ダイバーシティ」や「ダイバーシティ・マネジメント」などという言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか(Wikipedia「ダイバーシティ・マネジメント」)。「ダイバーシティ」とは、「多様性(diversityvariety)」を指す言葉です。「多様性」とは、いったいどういうことなのでしょうか。

 「グローバル化」という言葉のとおり、近年では企業が国境をこえて合併したり、身近な人が転勤で海外に赴任したりなどというお話はめずらしくありません。「ダイバーシティ・マネジメント」は企業の発展に貢献するためのものであり、「国籍や文化、性別、生活環境、価値観などのさまざまな要素が異なる人材の能力を幅広く経営に活用するのだ!」という発想です。ここでは「多様性」を、「知識」や「情報」を含む広義的な概念として捉えます。

 労働を需要する側であるそれぞれの会社(事務所、お店など)にとって、とくに少子高齢化で労働力不足が懸念されている日本においては、組織がこのような発想により多様な人材を確保して、その能力を活用できる体制を構築することは望ましいのではないでしょうか。

 労働を供給する側にとっては、たとえば海外から仕事を求めてやってきた人や家庭の事情により長時間の勤務が難しい人など、それぞれの異なる状況に応じた労働需要があれば働きかたの選択肢が増えますし、雇用も促進されそうです。

 医学者で、科学者でもあるアシュビー(William R. Ashby)さんは、「複雑な環境に適応するためには、その複雑な環境と同じ程度の多様性が必要なのだ!」といいました(最小有効多様性の法則)。

 さまざまな要素が異なる人材の能力を活用することができれば、いろいろなメリットがありそうです。多様な「見かた」や「考えかた」も組織として有効に活用できそうです。しかし、組織にとっては、やはり「多様性」を確保すること自体が目的ではありません。「多様性」があれば、それだけで企業が成長するわけではありませんよね。

 「多様性」が確保できても、その多様な人材を管理したりコントロールしたりして活用することができなければ意味がありません。「多様性」を確保すること、さまざまな要素が異なる人材を集めることが「ダイバーシティ・『マネジメント』」ではありません。

 また、人にはそれぞれ個性があります。たとえば、日本は「礼儀を重んじる文化」であるといわれることがありますが、日本人であれば、みなさんが海外の人より礼儀正しいというわけではありません。おとこの人であれば、みなさんがおんなの人より体力があるというわけではありませんし、大学を卒業した人はしていない人より知識があるというわけでもありません。

 つまり、その組織の目的を達成するうえで必要だと思われる「多様性」を把握することだけでなく、有効な「多様性」を個人レベルで見きわめることが大切だと考えられそうですね。そして、その「多様性」を組織としてうまくまとめることにより、多様な能力を効率よく活用する必要がありそうです。

 「組織的知識創造」においては、「多様性」だけでなく、「知識」や「情報」についての「冗長性(redundancy)」が必要であるといわれています。「冗長性」は、効率的なコミュニケーションの促進に有効です。ある「知識」や「情報」について共通の認識や経験があれば、円滑な意思疎通ができそうですね。

 たとえば、「英語がわからない日本人」と「日本語がわからないアメリカ人」の意思疎通には時間がかかりそうですし、誤解が生じることも多いかもしれません。コミュニケーションの相手に共通の「知識」や「情報」があれば、つたえたいお話やその内容を効率的に伝達することができそうですね。

 みなさんの会社(事務所、お店など)には、どのような「多様性」や「冗長性」があるのでしょうか。まずは、現在の組織における「多様性」や「冗長性」を認識することで、組織能力を強化するために、このような概念を活用することができるかもしれませんね。

提携中小企業診断士 岩田 岳








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