わかりやすい経営コラム ~経営者の皆さまへ~
 

 part28「ミクロとマクロ(物理学!?)」

 「ミクロ経済学」は、その分析対象が「家計」や「企業」でした。「マクロ経済学」では、それらの集合である「国」全体の経済を分析します。

 「合成の誤謬」のお話では、経済学における「ミクロ」の行動と「マクロ」の行動による結果が、必ずしも同じではありませんでした。

 さて、「ミクロ」というと、科学の分野でよくでてくる「分子」や「原子」、「クォーク」などの目にみえないような、とにかくとても小さな物質が思いうかびます。「マクロ」はどうでしょうか。みなさんは、大きな星や宇宙などを想像するのではないでしょうか。

 物理学者のボーア(Niels H. D. Bohr)さんなどが確立した「量子論」や、アインシュタイン(Albert Einstein)さんの「相対性理論」はとても有名ですよね。

 「原子」の構成物質であり、とても小さな「電子」には、この分野の専門家ではないわたしにはとても理解できないような不思議な性質があるようです。

 たとえば、「電子」は「粒子」と「波動」の両方の性質をもっています(Wikipedia「粒子と波動の二重性」)。

 「電子」は、だれかが発見するまでは、「波動」の性質により、どこにあるのかはっきりとはわかりません。だれかが発見してはじめて、ひとつの「粒子」である「電子」としてその場所が確定します。つまり「電子」とは、だれかが発見するまでは、どこかひとつの決まった場所に存在しているものではないのです。

 ひとつの「電子」を2つのスリットに向けて発射するという実験があります(Wikipedia「二重スリット実験」)。「電子」には「波動」の性質があります。そのため、なんと、ひとつの「電子」は2つのスリットを通ったという現象が確認できるそうです。

 じつは、目にみえる物質でも同じ「波動」の性質があるといわれています。目にみえる物質が、「ミクロ」である「分子」などの物質の集合だと考えると当然なのかもしれません。しかし、物質が大きくなると、その大きさに対する波長がとても短くなってしまうために、このような不思議な現象は確認することができません。「ミクロ」では確認できても、その集合である「マクロ」では確認できない現象なのです。

 せっかくなので、宇宙のお話です。

 「光」の速度は、秒速約30kmです。そして、「光」の速度は観測者が運動する速度にかかわらず、いつでも秒速約30kmで一定です。

 秒速1kmで走る自動車があったとします。いま、この自動車が同じ秒速1kmで走る対向車とすれ違う場合、車内からは、その対向車の速度が秒速2kmにみえるはずです。しかし、その対向車が「光」である場合、車内からみえる「光」の速度は秒速31kmではありません。秒速30kmでかわらないのです。

 「光」のこのような性質により、「一般相対性理論」では、運動する物質や重力の影響を受ける場所では「時間の進みかたが遅くなる」ことを説明しています。

 みなさんは、「光」の99%というとんでもない速度で移動ができるロケットで、1年間宇宙旅行をして地球にかえってきました。すると、ロケットのなかにいるみなさんにとっては1年しか経過していませんが、そのあいだに地球では7年が経過していました。このロケットで旅行した1年は、地球で生活している人にとっては7年なのです。

 「量子論」や「相対性理論」のお話は、わたしたちが生活するうえではあまり必要がないものかもしれません。しかし、これらの理論は半導体や量子コンピュータ、全地球測位システム(Global Positioning System)などに応用されています。なんだかワクワクしてきますね。

 経営のお話にもどりましょう。物理学では例が極端でしたが、企業などの組織が小さい場合と大きい場合でも、その性質や問題点、課題が異なるのではないでしょうか。

 小さな組織ならではの課題を解決しながら成長した会社が大きな組織になるにつれ、「ミクロ」の集合では解決できない課題が生じるかもしれません。「合成の誤謬」では「家計」と「国」でその違いを分析しました。「ミクロ」と「マクロ」における、その「性質の違い」を理解することができれば、経営にも活かすことができそうです。「部分最適」の集合が「全体最適」であるとはかぎりません。

提携中小企業診断士 岩田 岳







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