わかりやすい経営コラム ~経営者の皆さまへ~
 

 part21「SECIモデル」

 みなさんの会社(事務所、お店など)には、さまざまな知識や経験、ノウハウのあるかたがたが集まっているのではないかと思います。このような個人の優れた知識は、会社(事務所、お店など)全体で共有して、組織として活用したいところです。

ナレッジマネジメント(knowledge management)という管理手法があります(Wikipedia「ナレッジマネジメント」)。ここでは、「知識」という言葉を「経験」や「ノウハウ」などを含む広義的な意味として捉えています。そして、「part1」でちょっとだけお話した「暗黙知」と「形式知」に着目します(part1「経営戦略ってなんだろう?①)。

「暗黙知」とは、言葉で表現するのが難しい感覚的な知識です(Wikipedia「暗黙知」)。「形式知」とは、言葉や数字などで明確に表現することができる知識です(Wikipedia「形式知」)。

 「暗黙知」を「形式知」に変換するのも、「形式知」を「暗黙知」に変換するのも、どちらもかんたんではなさそうですね。

 「暗黙知」の説明には、自転車の例がよくつかわれています。みなさんは、自転車に乗ることができるでしょうか。「自転車に乗る方法」は「暗黙知」だと考えることができそうですね。自転車に乗ることができる人は、その方法を言葉で表現する(形式知化する)のは難しいと思います。「自転車に乗る方法」という本があったとしましょう。自転車に乗ることができない人がこの本を読んでも、すぐに乗ることができるようになる(暗黙知化する)とは考えにくいですよね。

 経営学者の野中(野中郁次郎)さんは、「『暗黙知』と『形式知』の相互作用により、あらたな知識が創造されるのだ!」といいました。これが「SECI(せき)モデル」です。

 「SECIモデル」には、4つのプロセスがあります。

SSocialization             共同化(個人の暗黙知が、共通の体験などを通じて共有される段階)

 EExternalization          表出化(暗黙知を文書化して、形式知として共有する段階)

 CCombination             結合化(形式知の結合により、あらたな形式知を創造する段階)

 IInternalization           内面化(組織の形式知が、実践などを通じて個人の暗黙知に変換される段階)

 田中パン店には、パン職人さんが3人います。佐藤さんはパンづくりの経験が豊富ですが、あとの2人は最近パンづくりをはじめた新人さんです。店主である田中さんは、田中パン店のおいしいパンづくりの技術をパン職人さんたちに効率的につたえるとともに、田中パン店のパンをさらにおいしいパンにしていきたいと思っています。

 田中さんは新人さんにパンづくりを教えるために、2つのチームをつくりました。田中さんと新人さん、佐藤さんと新人さんの2つのチームにわけてパンづくりをはじめたのです。しばらくすると、新人さんたちも田中パン店のおいしいパンがつくれるようになりました(共同化)。

 それぞれのチームは、おいしいパンをつくるために大切なことを話し合い、ノートにまとめることにしました。おたがいのノートには、田中さんや佐藤さんがふだん意識していなかったことも掲載されていました(表出化)。

 田中さんは、田中パン店のパンをさらにおいしいパンにするために、みんなで「おいしいパン会議」を開催することにしました。そこで2つのチームのノートを分析して、重要なことをまとめた「田中パン店おいしいパンマニュアル」を作成しました(結合化)。

 「田中パン店おいしいパンマニュアル」を活用してパンづくりの経験を重ねた職人さんたちは、よりおいしいパンをつくることができるようになりました。そして、それぞれがおいしいパンづくりのコツをつかんで、あらたな工夫をしているようです(内面化→共同化へ)。

 このような知識創造プロセスの概念は、「暗黙知」と「形式知」に着目して取り組むことで、個人の優れた知識を組織として活用するうえで有効な場面がありそうです。


提携中小企業診断士 岩田 岳 






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