「マネジメント」とは、主に組織が目標などを達成するためのプロセスにおける「経営」や「管理」であると捉えられることが多いようです。しかし、わたしたちは個人でも、目標を達成するために「マネジメント・サイクル」のような管理や「意思決定」を日常的にしているのかもしれません。「マネジメント」の概念は、決して複雑で難しいものではありません。今回は、組織ではなく個人を例にして考えてみたいと思います。

　ある日、田中パン店の店主である田中さんは奥さんにいいました。

　「きみは、最近ちょっと太ったのではないかな？」

　田中さんの奥さんは、この言葉がとても気になってしまいました。「わたしは、最近太ってしまったのかしら…」体重をはかってみると、以前にくらべてたしかに増えているようです。そこで、田中さんの奥さんは「ダイエットをしよう！」と決意しました。

　「体重を1か月で1kg減少させるのだ！」と考えた田中さんの奥さんは、ダイエットの方法として「いままでよりも1日の食事量を減らす」ということを決めました。田中さんの奥さんは自分なりにがんばりました。そして1か月後、田中さんの奥さんの体重は0.2kg減少しました。

　田中さんの奥さんは、この結果に満足することができませんでした。ふりかえって考えてみると、思ったとおりに食事を制限できた日もありましたが、おなかがすいてがまんができないときには、いままでよりたくさん食べてしまう日もありました。

　また、食事を制限できたつぎの日に必ずしも体重が減っているわけではないことがわかりました。そして、食事量を減らさないといけないと考えすぎてしまっているためか、なんだかイライラすることが多くなったような気がしています。

　そこで田中さんの奥さんは、ダイエットをつづけるために、一部の「やりかた」をかえてみることにしました。まず、毎日の食事の献立と摂取カロリーをノートに記録することにしました。毎朝はかっている体重も同じノートに記録して、その記録から計算した1週間の平均体重を目標達成の基準にしようと考えました。また、ムリをして食事量を減らすのではなく、やさい中心の献立でたくさん食べることに決めました。

　そして、田中さんの奥さんの「1週間の平均体重を3か月で1kg減少させるのだ！」というあらたな挑戦がはじまりました。

　いかがでしょうか。田中さんの奥さんの行動は、個人目標を達成するためのものです。そして、これらの行動は「マネジメント」を意識したものではないのかもしれません。

しかし、田中さんの奥さんの行動には、「計画（Plan）」、「実行（Do）」、「評価（Check）」、「改善（Act）」のプロセスが含まれていると考えることができそうです。そして、つぎの「計画（Plan）」を「実行（Do）」しようとしています。そこには、それぞれのプロセスに必要な意思決定がともなっています。

　ここで「マネジメント」とは、主に組織が目標などを達成するためのプロセスにおける「経営」や「管理」であると考えてみましょう。「マネジメント」は、組織目標を達成するために、意識的に「マネジメント・サイクル」による管理や「意思決定」をすることであるということができそうです。

提携中小企業診断士　岩田 岳