わかりやすい経営コラム ~経営者の皆さまへ~
 

 part17「言葉の定義づけ②」

 みなさんにも、お話を聞いていて相手のつたえたいことがよく理解できなかったという経験があるのではないかと思います。それにはいろいろな理由があるのだと思います。聞いたことがある言葉ではあるのですが、それをコミュニケーションの相手がどのような意味でつかっているのかということがよくわからなかった経験もあるのではないでしょうか。ここでは定義の明確化について、例をあげてもうすこし考えてみたいと思います。

 みなさんが幼いころ、学校の先生から「『正しいこと』をしましょう!」ということを教わったとします。しかし、みなさんはそれぞれ「正しいこと」に対する解釈が異なるために、行動も異なってしまいます。「正しいこと」とはどのようなことを意味するのでしょうか。みなさんは、「正しいこと」をどのような基準で判断するのでしょうか。

 Aさんは、BさんからCさんの悪口を聞きました。

 このようなウワサは広まりやすいのでしょうか。これがCさんにもつたわってしまったようです。Aさんは、わるいウワサを耳にして不安になったCさんに対して、どのように接することが「正しいこと」だと考えられるでしょうか。

 数学でよくでてくる「正・誤」のほかに、道徳などでは「善・悪」という言葉があるようですし、哲学では「真・偽」などという表現も聞いたことがあります。これらの「正・善・真」はすべて「正しいこと」のような気もしますが…。

たとえば、AさんがCさんに対して「BさんからCさんの悪口を聞いたのだ!」とつたえることも、「BさんからCさんの悪口は聞いていないのだ!」とつたえることも、あるいはなにもつたえないことも、どれも「正しいこと」であるのかもしれません。このように、「真」であっても必ずしも「善」ではない場合や「善」であっても必ずしも「真」ではない場合があるようです。

ここで学校の先生は、みなさんといっしょに「正しいこと」がなにであるかを定義する必要がありそうです。「善」を優先する行動が「正しいこと」であると考える人や「真」を優先する行動が「正しいこと」であると考える人など、みなさんはそれぞれ「正しいこと」に対する解釈が異なります。そこで、まずは「『正しいこと』とはなにか」ということを学級会で明確にしたうえで話し合いを進めます。いろいろな意見がでてくるでしょう。この場面で「BさんとCさんをイヤな気持ちにさせないこと」が「正しいこと」であれば、それはBさんやCさんの性格などにも依存するのかもしれません。

 すこし極端な例でしたが、みなさんの会社(事務所、お店など)での会議や取引先とのコミュニケーションにおいては、とくに「キーワード」の定義が不明確な状態である場合には注意が必要になりそうですね。

 法律用語にはさまざまな特殊な表現があります。たとえば、「善意の第三者には対抗できないのだ!」という文章は、「ある重要な事実を知らない第三者に対しては権利を主張できないのだ!」ということであり、この「善意」というのは、さきほどでてきた道徳などでいう「善意」とは意味が異なります。日常会話でよくつかう言葉ではありませんが、やはり言葉の定義が不明確な状態では相手につたわりにくいですよね。相手にみなさんがつかう言葉に対する知識がなかったり、異なる解釈をしていたりする場合には説明が必要です。

 一般的に、経営理念やドメインは言葉で表現されます。また、「経営戦略」を策定するということには、従業員やお客さん、株主などのその企業にかかわる人々が、どのように意思決定をしてどのように行動するのかということを示すという目的があります。これらにつかわれる言葉についても、定義を明確にして共通の解釈をすることが大切です。


提携中小企業診断士 岩田 岳 






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