ふだん、わたしたちはさまざまな言葉をつかっています。だれかになにかをつたえたいときには、言葉をたくさん組み合わせて相手にわかってもらえるように説明しています。しかし、「経営戦略」のように、定義が不明確な言葉もたくさんあります。「経営戦略」という言葉は定義が不明確であるために、いろいろな意味でつかわれているようです。
このように、定義が不明確な言葉についてそれぞれが異なる解釈をしたままコミュニケーションを進めるとどうなるでしょうか。
会議などで「経営戦略」という言葉がでてきたときに、「それが具体的になにを指しているのか」わからないことが多いというお話をよく聞きます。これは、会議に出席しているかたがたにとっての「経営戦略」という言葉に対する解釈が、それぞれ異なる状態であるのかもしれませんね。また、「経営戦略」という言葉をつかっている人も「『経営戦略』とはなにか」ということを明確にしていないのではないかと考えられます。
コミュニケーション(意思伝達)は「相手につたえる」ということが大切ですので、あえて抽象的な表現をつかうこともあるかと思います。
「おなかがすいた!」
「ねむい!」
「おもしろい!」
「あぶない!」
「おいしい!」
「かわいい!」
「たのしい!」など…
「経営戦略」のような名詞ではありませんが、なんと、これらはすべて「ヤバい!」という言葉におきかえることができるそうです。このような言葉は定義づけする必要がないのかもしれませんね。
しかし、たとえば会議の場において、言葉の解釈が異なる状態でコミュニケーションを進めると、それぞれのお話を理解するのに時間がかかったり、おたがいに誤解が生じたりすることで、「ヤバい!」ことになりそうですね。
そもそも聞いたことがない言葉には説明が必要ですが、このように定義が不明確な言葉にも「どのような意味でつかっているのか」ということの説明が必要な場面が多くあります。
とくに、最近のビジネス用語にはわかりにくい言葉や定義が不明確な言葉が多いように感じます。お話をしているかたにとってはあたりまえのようにつかっている言葉であっても、このような言葉を多用しているとお話の内容が相手につたわりにくくなりますし、聞いているかたが理解しようと努力するのも大変です。円滑なコミュニケーションには、言葉の意味について共通の解釈が必要なのです。
きょうの会議で、会社の幹部候補であるみなさんに対して経営者がいいました。「みなさん、つぎのミーティングまでにわたしたちの会社の『経営戦略』を考えてきてください!」
「『経営戦略』とはなにか」ということが明確になっていない場合、みなさん困ってしまうのではないでしょうか。あるいは「経営戦略」がいろいろな意味でつかわれている言葉であるために、「経営戦略」という言葉に対する解釈がそれぞれ異なる状態のまま、「経営戦略」という言葉の定義が不明確な状態のままミーティングが進んでしまうかもしれません。
提携中小企業診断士 岩田 岳
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