経営戦略論では、いくつかの観点から研究方法が分類されることがあり、このときに「○○アプローチ」という言葉がよくでてきます。
このうち、つぎの2つのアプローチについて考えてみたいと思います。
★「ポジショニングアプローチ(positioning approach)」
★「資源アプローチ(resource based view)」
「ポジショニングアプローチ」は、外部環境に着目したアプローチです。かんたんに説明すると、自社がどのような市場(その市場の構造)のどのあたりにポジションをおいて競争優位を確立するのか、ということです。
田中さんと鈴木さんのパン屋さんがある町を舞台にしましょう。鈴木さんの考えたドメインでは「お客さんに」「パンを」提供します。これは、たくさんあるパン屋さんが繰り広げる競争のどまんなかにポジションをおくことになりそうです。
一方で、田中さんの考えたドメインでは「この町に住むお年寄りに」「たのしくお話やお食事ができる場所を」提供します。同じ市場にいても、たくさんあるパン屋さんとは別のところにポジションをおくことで、真っ向勝負はさけられそうですね。このように、自社にとって有利な位置にポジションをおくことで利益を獲得するという発想です。
「資源アプローチ」は、内部環境に着目したアプローチです。かんたんに説明すると、自社がどのような資源を形成して競争優位を確立するのか、ということです。
経営学者のバーニー(Jay B. Barney)さんは、「経済的な価値があって、手にいれることが難しくて、他社にはとてもマネができないような経営資源は、組織として活用することで『持続的競争優位の源泉』になるのだ!」といいました。
田中さんと鈴木さんのパン屋さんがある町では、この2店のほかにもたくさんのパン屋さんがありました。ほかのパン屋さんにはないような「技術」や「資源」があれば、あらたな価値をつくりだすことができそうです。このように、自社にとって有利になる経営資源を形成して、それを有効に活用することで利益を獲得するという発想です。
この2つのアプローチは、競争優位の源泉を求める対象が違います。「ポジショニング」と「資源」です。自社にとって有利な位置にポジションをおいても、経営資源に優位性がなければ、すぐにそのポジションの競争が激しくなるかもしれません。自社にとって有利になる経営資源を形成しても、ポジションが不明確であれば、その経営資源が分散して失敗するケースがあるかもしれません。
どちらかにかたよることが得策ではなさそうですね。
このように、それぞれの観点からその発想を整理してみると、「経営戦略」を策定したり、ドメインを定義したりする場合には、「ポジショニング」と「資源」両方のアプローチが活用できそうです。外部環境と内部環境のどちらかではなく、双方に着目して考える必要がありそうですね。
提携中小企業診断士 岩田 岳
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